アジア通貨は、対米ドルでまちまち。タイバーツとインドネシアルピアが軟調。韓国ウォンは横ばい。その他は小幅上昇で、中国人民元は中国経済活動回復を見て上昇幅が相対的に大きめ。
先週のレビュー
【中国】14日、6月の輸入額・輸出額ともに市場予想を上回り経済活動の戻りを確認。貿易黒字幅は輸入額の上振れで市場予想を下回る水準。16日発表、第2四半期実質経済成長率は市場予想を上回り前年同期比+3.2%。公共投資の増加と工業生産の伸びが牽引。6月の鉱工業生産指数は市場予想通り+4.8%。小売売上高は前年同期比▲1.8%と市場予想を下回り、個人消費は引き続き軟調。固定資産投資や不動産投資額は市場予想を上回り、特に過剰流動性が不動産に流れているようにも見える。
【インドネシア】15日発表の輸出額、輸入額はともに市場予想を上回り、特に輸出は前年同期比▲12.6%の予想から実績+2.3%と大幅に上振れ。結果、貿易収支は赤字予想が外れ黒字の結果。15日、国内自動車販売台数は伸びず、コロナショックから回復途上であることを示す。16日、中央銀行は0.25%ポイントの利下げを発表。2か月連続で経済回復を優先。国債買入れの積極化も発表、財政運営は要注視(※)。
【インド】15日発表の輸出額、輸入額はともに大幅に減少、特に輸入は前年同期比▲47.6%と悲惨な結果。内需の減少が顕著である証左。
【シンガポール】14日、第2四半期の実質経済成長率は市場予想を下回り前年同期比▲12.6%とリセッション入り(2四半期連続でマイナス成長)。4月7日~6月1日迄実施した部分的なロックダウンが主要因。17日発表の非石油地場輸出は前年同期比+16.1%と市場予想を上回る。
【韓国】15日発表した6月の失業率は4.3%と市場予想を下回る水準。16日の金融通貨委員会で政策金利を据置き。声明では、今後も緩和的な政策を維持する点、と今年の成長見通しは5月時点の▲0.2%を下回る公算と発表。
【フィリピン】4月の海外送金額は前年同期比▲16.2%と市場予想を下回る水準。

インドネシア:スリ・ムルヤニ財務相が中銀による財政サポート策を発表
中銀はGDPの約2.5%に相当する280億ドルの新規国債を政府から直接引き受け、金利収入も政府に返還。さらに、入札で発行する新規国債120億ドルについては、財務省と中銀が共同で利払い費を負担。
インドネシアは、国債価格の透明性を保つ体制も整えている。中銀が買い入れる国債は、流通市場で取引可能とする計画で、中銀には国債を売却するという選択肢がある。長期国債を購入する投資家も、流通市場があれば、含み損が発生していないか確認することができる。
ロイター記事
コラム:ルビコン渡るインドネシア中銀、国債引き受け周到に準備 https://t.co/HNdmSCQ1LB
— Tbridge (@Tbridge8) July 19, 2020
中銀の国債引き受け。新興国がむやみにやってはいけないと思う。通貨はその裏に国家の財政的信頼が必要。政府から直接国債を買い入れは財政運営上ネガティブに評価すべき。#インドネシア財政 #国債買入
ロイター記事についての所見
私の意見は、インドネシア国債(INDOGB)は先進国国債と比べて流動性が大きく見劣りし、マーケットメーカーも少ない。大手証券会社にはINDOGBのマーケットメーカーがいるが、だいたい1ショット大きくて100億程度(つまりプライスに影響を与えずに1日に売れる最大金額は、5ブローカーと取引するなら凡そ500億円が目安となる)。つまり中銀には売りたいと思った時に流通市場で売るオプションはない。なぜならば額がでかすぎるから。100億ドルって1兆円ぐらいですよ。捌けるわけないと思います。そして、危機時には超長期債の流動性は著しく落ちます。ファンドマネージャーでそのような時にポジションを落とさないのはまずいですが、中央銀行にはそのオプションは金額が大きくてほぼないです。価格もあってないような状態になりますので、含み損を確認して云々は机上の空論にすぎません。発行する財務省が一番よく理解しているはずですけどね。
記事は、現実のマーケットストラクチャーを捉えていない可能性があります。

今週の注目点
今週は、中国の消費者物価指数・日々のインターバンク市場への流動性供給量、シンガポール・マレーシアの消費者物価指数、香港の失業率、韓国の実質経済成長率、タイの貿易収支に注目。インドネシアは利下げ後に材料出尽くし、中央銀行による国債買い入れはソブリンクレジットにはネガティブ。アジア圏の物価が上がってくるのはまだ先と予想(注意すべきはインド)。
【通貨】アジア通貨(対米ドル)は人民元以外は軟調を予想。
【債券】アジア債券は、米金利がレンジ推移となる中、インドネシア・フィリピン・インドを除き、横ばい推移。その3か国は長期ゾーンの金利は売り圧力が高まり、上昇を想定。


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